Ecowittのウェザーステーションをもう少し調べてみた件

目次
⚠️ 注意:本記事で紹介するEcowitt製品(WS90、WN1821_C、WH51)は日本国内での技術基準適合(技適)認証を取得していないため、電波法上は国内での使用が認められていません。使用は推奨できず、導入にあたっては自己責任で行ってください。なお、研究目的等で使用可能とされる実験局免許制度もありますが、現実的には取得条件が非常に厳しく、一般農業用途では事実上利用不可能なため、本記事ではその方法については扱いません。
IoTで農業ハウスだけでなく外の環境も見える化しよう
ビニールハウスなどの農業現場で、温度や湿度、土壌の状態をリアルタイムに把握できたら便利だと思いませんか?IoT(モノのインターネット)技術を使えば、センサーで測った環境データを遠隔で確認でき、農作業の効率化や生産性向上に役立てることができます。
しかし、国内で流通している国産の環境観測システムは非常に高価で、一般的な農業経営にとっては導入のハードルが高いのが現実です。一方で、SwitchBotなどの手頃な価格で揃えられるセンサー群も存在しますが、それらは簡易な室内センサーが多く、限定的な用途にとどまります。また、温室内の環境制御に特化したシステムは存在しても、風速・風向、降雨量、日射量といった気象観測用のセンサー自体がそもそも搭載されていないケースが多く、これらのデータを得るには専用の気象センサーが必要となります。
そこで、**中価格帯で多機能・多項目計測を実現できるEcowitt社のセンサー製品(WS90、WN1821_C、WH51)**を採用し、ビニールハウス内とその周辺の屋外環境をモニタリングしています。本記事では、これらの製品を使った日本国内での導入方法や機能、設置に必要なもの、純正アプリやブラウザでの可視化、APIによるデータアクセスの概要などを、IoT初心者の農業者向けにわかりやすく解説します。
以下では各センサー機器の役割と基本機能を紹介し、導入に必要な機材や設置のポイント、データの確認方法、そしてデータ活用の可能性について説明します。
WS90 – 屋外用多機能気象センサー
WS90は、屋外環境のさまざまな気象データを一体型で測定できる高性能センサーです。具体的には以下の7項目を1台で計測できます。
気温・湿度
風速・風向(超音波式)
降雨量(雨滴の振動を検知)
日射量(照度)
紫外線指数(UV)
特徴的なのは、可動部がない設計です。風速と風向はプロペラではなく超音波方式で測定され、雨量も振動センサーによる測定方式を採用しているため、機械的な故障リスクが少なく、定期的な清掃程度で長期運用が可能です。
電源は内蔵のソーラーパネルでまかなわれ、日照が不足する場合のためにバックアップとして単三電池2本が使用できます。センサーからのデータ送信は無線方式で、対応するコンソール(WN1821_C)やゲートウェイ機器と接続することで、リアルタイムでデータを閲覧できるようになります。
通信距離の目安は見通しで約150m程度ですが、ハウスの骨組みや壁を挟むと到達距離は短くなるため、WN1821_Cとの距離と障害物の有無を考慮した設置が求められます。
設置の際は、以下の点に注意してください:
風の影響を正しく測定するため、周囲に建物や木がない開けた場所で、できれば2m以上の高さに設置する。
ソーラーパネルが上部にあるため、直射日光を十分に受けられる場所を選ぶ。
雨量の測定精度を保つため、水平に設置することが重要です(水平器使用を推奨)。
このWS90を導入することで、一般的な環境制御装置では取得できない「気象情報」まで含めた広範囲のデータを農業現場で把握できるようになります。
WN1821_C – CO₂モニター内蔵Wi-Fiコンソール
WN1821_Cは、Ecowitt製センサーからのデータを受信・集約・表示するための中核的なデバイスです。Wi-Fi接続機能を内蔵しており、センサーから受け取ったデータをEcowittのクラウドにアップロードしたり、スマートフォンアプリやブラウザ上で表示するための**ゲートウェイ(中継基地)**として機能します。
さらに、このWN1821_C自体にも以下の内蔵センサーが備わっており、ビニールハウス内の空気環境のモニタリングにも活用できます:
二酸化炭素(CO₂)濃度
室内温度
室内湿度
気圧
このため、ハウス内の換気管理やCO₂施用の最適化に役立てることができます。特にCO₂濃度は、光合成に関わる重要なパラメータであり、数値として常時可視化できるのは大きなメリットです。
主な特徴:
4.9インチのカラー液晶画面により、センサー値を直感的に確認可能。
測定データは、Wi-Fi経由でクラウドへアップロード可能。
電源はUSB給電(5V/1A)、停電対策として単三電池2本によるバックアップ動作に対応。
最大で8台の土壌水分センサー(WH51)などの周辺センサーと連携可能。
この端末からEcowittクラウドにデータが送信されると、スマートフォンアプリ(WS View Plus)や、ブラウザからリアルタイムでデータを閲覧できるようになります。特にブラウザ表示は1分間隔で自動更新される仕様で、作業中に定点モニターとして活用することも可能です。
なお、表示できる項目には制限があり、風向・風速、雨量など一部のWS90の情報はこの端末の画面には表示されないため、詳細な気象データはクラウドやアプリ側で確認する必要があります。
WH51 – 土壌水分センサー
WH51は、地中の水分量(含水率)をリアルタイムに測定できる、シンプルながら非常に有用な棒状のセンサーです。ビニールハウス内の畝(うね)や鉢植えなどに挿し込んで使用することで、作物の根域付近の水分状態を数値化し、かん水(灌水)タイミングの最適化や水の過不足の把握に役立ちます。
主な仕様と機能:
測定対象:土壌の含水率(0~100%)
測定周期:約70秒ごとにデータ送信
電源:単四電池2本(1年以上動作)
通信:Ecowitt独自プロトコル(無線)
耐候性:防水性能 IP66(屋外設置に対応)
このセンサーは単体では使えず、必ずWN1821_Cのような対応コンソールと組み合わせて使用します。1つのコンソールに対して最大8本まで接続可能で、例えば圃場の異なる位置や異なる作物ごとに、複数のセンサーを設置して比較することができます。
設置のポイント:
測定したい作物の根の近くに垂直に挿し込む(黒いプローブ部全体が埋まるように)。
土が硬い場合は、事前に細い棒などで穴をあけてから差し込むと破損防止に効果的。
挿し込み直後は数値が安定しない場合があるため、数分程度馴染ませてから確認するのが理想です。
地上に出る部分はできるだけ**目立たせて踏まないよう対策(目印や柵など)**を。
このセンサーがあることで、「土が乾いてきた感じがする」という感覚的な判断に頼らず、数値で水分量を把握できるため、過剰な水やりや、水不足によるストレスのリスクを減らすことができます。特に高温期の水管理や、培地栽培での精密灌水においては非常に強力なツールとなります。
センサー3機種の機能比較と使い分け
これまで紹介してきた3種類のセンサー(WS90、WN1821_C、WH51)は、それぞれ異なる役割を担っており、組み合わせて使うことでハウス内外の環境を総合的に把握することができます。以下の表に、それぞれの主な機能と用途をまとめます。
これらのセンサーを組み合わせることで、たとえば以下のような環境把握が可能になります:
WS90:ハウス外の気象条件(気温・降雨・風など)を監視
WN1821_C:ハウス内の空気環境(温湿度・CO₂)を表示・管理
WH51:作物の根元の水分状況を数値でモニタリング
室内と屋外、空気と土壌という複数の視点での計測が可能となり、これまで勘や経験で行っていた作業が、よりデータに基づいた判断に置き換わります。
導入に必要な機材とネットワーク環境
Ecowittのセンサーを農業現場で活用するには、センサー本体に加えて、通信機器や電源、設置用具などの周辺機材が必要です。以下に、導入時にそろえておきたいものを一覧で紹介します。
【センサー機器】
WS90(屋外気象センサー)
→ 気温・湿度・風・雨量・照度・UVなどを一括測定WN1821_C(室内コンソール)
→ センサーのデータを受信してクラウドに送信。CO₂濃度や室内温湿度・気圧も測定可能WH51(土壌水分センサー)
→ 必要な数を用意(1台のWN1821_Cにつき最大8本まで接続可能)
【電源・電池】
USB電源アダプタ(WN1821_C用)
→ 常時給電が必要。5V 1A以上を推奨単三電池(WS90、WN1821_Cのバックアップ用)
→ 停電時でもセンサーが動作可能単四電池(WH51用)
→ 約1年使用可能。定期交換を推奨
【通信環境】
2.4GHz帯のWi-Fiルーター
→ WN1821_Cがこの帯域にしか対応していないため要注意。5GHzは非対応インターネット回線(常時接続)
→ クラウドにデータをアップロードするため、インターネット必須
圃場やビニールハウスにネットが無い場合は?
→ 以下のいずれかで通信環境を構築します:
モバイル回線対応のホームルーター
例:docomo home 5G、SoftBank Air、auホームルーターなどSIMフリーのルーター+データSIM(格安SIM可)
モバイルWi-Fiルーター(通信量に注意)
【スマートフォン(初期設定・確認用)】
iPhone または Android スマートフォン
「WS View Plus」アプリをインストール
初期設定でWN1821_CをWi-Fi接続したり、クラウド登録するのに使用
【設置用品】
WS90用のポールやパイプ(直径25~50mm推奨)
→ ハウス骨組みや外構に固定して使用ポール固定用のUバンド・ステー・結束バンドなど
WH51を地中に挿す位置のマーキング(目印、ラベル、柵など)
→ 踏まないように安全対策が必要
【あると便利なもの】
水平器(WS90を正確に設置するため)
長めのUSBケーブル(電源位置が遠い場合)
延長コード(USB電源アダプタ用)
スマホのテザリング(初期設定中にネットが不安定な場合の代替)
このように、センサー自体は比較的コンパクトですが、安定してデータ取得・送信を行うためには、**「電源」「Wi-Fi環境」「設置場所の確保」**が鍵になります。
特にハウスにWi-Fiが届かない場合には、4Gホームルーターを使ってネット環境をつくることが現実的な解決策です。これさえ整えば、農業現場でも都市部と同じようにクラウド経由でデータを扱うことができます。
データの確認方法(アプリ・ブラウザ)
Ecowittのセンサーを設置して設定が完了すると、取得した環境データをリアルタイムで確認できるようになります。データの確認方法には、スマートフォンアプリとブラウザの2通りがあり、スマートフォンアプリは2種類存在するため、役割の違いを理解して正しく使い分けることが重要です。
アプリは2種類:役割の違いを理解して使い分ける
1. WS View Plus(設定・接続確認用)
WS View Plus は、センサーやコンソールの初期設定、Wi-Fi接続設定、ファームウェア更新、センサー登録・削除といった機器の設定作業に特化したアプリです。
主な用途:
WN1821_CをWi-Fiに接続する初期設定
センサーの登録・削除、動作確認
ファームウェアの更新
使用するタイミング:
機器の設置・導入時
Wi-Fiを再設定するとき
センサーの通信不調時のチェック
※データの閲覧機能もありますが、あくまで補助的です。日常的なデータ確認には不向きです。
2. Ecowitt アプリ(クラウド閲覧・日常確認用)
Ecowitt アプリは、クラウドにアップロードされたデータをスマートフォンで確認するためのアプリです。スマホ上でグラフを見たり、遠隔地のセンサー状況を確認したりする日常運用に最適です。
主な用途:
各センサーのリアルタイムデータ確認
日・週・月・年単位のグラフ表示
複数拠点やセンサーの一元管理
ハウス内環境の遠隔監視
使用するタイミング:
毎日の温度・湿度・CO₂などのチェック
データ履歴の確認
異常値が出ていないかの確認
パソコンやタブレットでの閲覧:ecowitt.net(ブラウザ)
スマホアプリだけでなく、PCやタブレットのブラウザから「ecowitt.net」にアクセスすることで、クラウドに送られたすべてのセンサー情報を大画面で確認できます。
主な特徴:
全センサー値をダッシュボード形式で一覧表示
データは1分ごとに自動更新(更新操作不要)
過去データのグラフ表示(日/週/月/年)
CSV形式でのデータダウンロードも可能
モニターに常時表示する運用もおすすめ
PCブラウザでの表示は、特に複数人での作業や事務所内での管理に向いており、クラウドに接続されたハウスの状態をリアルタイムで共有する際に有効です。
使い分けのまとめ
初期設定やトラブル対応には「WS View Plus」
毎日の監視やグラフ表示には「Ecowittアプリ」または「ecowitt.net」
大画面での常時監視にはブラウザ利用が最適
両方のアプリをインストールしておくことで、設定も確認もスムーズに行えるため、併用を基本と考えておくのがよいでしょう。
APIとデータ活用の可能性
Ecowittのシステムは、クラウドを介してセンサーデータを外部と連携できる**API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)**を提供しています。これにより、自分でセンサーデータを活用したシステム構築や自動化が可能になります。
ただし、APIを利用するには**ある程度のITスキル(JSON形式やHTTP通信の知識)**が必要となるため、本記事では詳細な使い方までは説明せず、概要とできることのイメージにとどめます。
APIで取得できる主なデータ
EcowittのAPIを使うと、以下のようなセンサー情報を取得できます。
気温・湿度(屋内/屋外)
CO₂濃度
気圧
土壌水分
雨量
風速・風向
UV指数・照度
日時情報・センサーIDなど
これらの情報はJSONという形式で提供され、一定間隔で外部サーバーへ送信したり、他サービスと連携したりすることが可能です。
どんな活用ができる?
自作のダッシュボード表示(例:Raspberry Pi+ディスプレイ)
LINEやメール通知との連携(しきい値を超えたら通知)
Google Sheetsへの自動記録(農業日誌と連携)
自動換気・潅水などの制御装置との接続(上級者向け)
他のIoTプラットフォーム(Home Assistant等)への統合
たとえば、「一定以上の気温になったらLINEに通知して、ファンを手動で回す」といった運用も実現可能です。さらに発展させれば、「自動でファンのスイッチをONにする」といった**自動化農業(スマートアグリ)**の基礎にもなります。
API利用の注意点
現状、APIキーの取得や手順の説明は公式サイト(英語)が中心です。
定期的に仕様変更がある場合もあるため、業務用途では慎重にテストを行う必要があります。
Ecowittのクラウドを使わず、**ローカルサーバーに送る方法(カスタムサーバー設定)**も一部可能です。
本記事の立場として
APIの活用は大きな可能性を秘めていますが、IoT初心者にとってはややハードルが高いため、まずは「クラウド+スマホアプリで環境を見える化」する基本運用から始めるのが現実的です。慣れてきたら、段階的にAPI活用にも挑戦してみると良いでしょう。
センサーとゲートウェイの通信方式について
Ecowitt製品では、センサー(例:WS90、WH51など)とゲートウェイ(WN1821_C)との間は、Wi-Fiではなく**Sub-GHz帯(1GHz未満)**による無線通信で接続されます。一方で、ゲートウェイ自体はWi-Fi経由でインターネットに接続します。
このように、通信経路が2種類存在し、それぞれに異なる電波法上のルールがあります。
【1】センサー → ゲートウェイ:Sub-GHz無線通信
使用周波数は製品ごとに異なり、代表的なものは以下の通りです:
433MHz帯(主に中国・オセアニア向け)
868MHz帯(主にヨーロッパ向け)
915MHz帯(北米向け)
※かつては920MHz帯(日本向け)モデルも存在したとされますが、現在は流通していない
この通信は、センサー側が送信、ゲートウェイは受信のみを行います。
🔸 電波法上のポイント:
センサーが電波を発信する側であるため、センサー側に技適(技術基準適合証明)が必要です。一方、ゲートウェイは「受信専用」であれば技適は不要です。
【2】ゲートウェイ → インターネット:Wi-Fi通信(2.4GHz)
ゲートウェイ(WN1821_Cなど)は、取得したデータを2.4GHz帯のWi-Fiで家庭のルーターと接続し、クラウド(ecowitt.net)へアップロードします。
🔸 電波法上のポイント:
Wi-Fi通信は送信を伴うため、ゲートウェイ自体に技適が必要です。
この技適がない場合、Wi-Fi通信を行うこと自体が違法行為となります。
✅ 要約と注意点
通信種別発信機器技適の要否備考Sub-GHz通信センサー必要ゲートウェイは受信専用のため不要Wi-Fi通信(2.4GHz)ゲートウェイ必要ルーター接続のため送信を伴う
結論
Ecowitt製品の国内使用にあたっては、以下2点が非常に重要です:
センサーに技適がない限り、国内で電波を発することは違法の可能性が高い
ゲートウェイはWi-Fi機器であるため、技適がなければ使用不可
つまり、現在市販されているEcowitt製品(WS90、WH51、WN1821_Cなど)はいずれも技適を取得していないため、電波法上のリスクを伴う使用となり、国内使用は推奨できません。
まとめ:現場で使えるIoT気象モニタリングの可能性と限界
本記事では、Ecowitt社のセンサー群(WS90、WN1821_C、WH51)を中心に、農業ビニールハウスおよび屋外における環境モニタリングの導入方法について紹介しました。
まず前提として、日本国内でこれらの製品を使用するには電波法上の制約があり、技適未取得の機器を用いることは原則として違法である点を最初に強調しました。センサーとゲートウェイの間のSub-GHz無線通信、ゲートウェイ自身のWi-Fi通信の両方に法的な留意が必要です。
そのうえで、Ecowittの魅力は以下にあります:
風速・風向・降雨・照度・UV指数など、一般的な農業センサーでは得られない本格的な気象データが計測できること
土壌水分やCO₂濃度など、ハウス内部の状態も把握できるセンサー群が揃っていること
純正アプリやWebブラウザによる直感的で高頻度な可視化(1分更新)
APIを用いた外部連携によるデータの自由な活用
コスト面でも導入しやすく、段階的な拡張も可能
これらは、国産の高価な観測システムに手が出せない現場や、SwitchBotのような家庭用センサーでは用途が不足する場面において、現実的な選択肢となり得ます。
ただし、使用にはあくまで法令を理解し、導入の是非を慎重に判断する姿勢が不可欠です。本記事の内容は、あくまで技術的可能性と導入事例を示すものであり、使用を推奨するものではありません。
IoTの活用は、農業の見える化・省力化に大きな可能性を持っています。だからこそ、法的にも正しく、安全に運用されるべきです。今後、国内でもこうしたセンサーが正規対応され、合法的に活用できる環境が広がることを期待しています。
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